特定非営利活動法人 環太平洋乳幼児教育学会日本支部
設立趣旨書
こども家庭庁の創設に伴い、こどもまんなか社会の実現がめざされています。2018年にブエノスアイレスで開催されたG20ではじめて、誕生からのすべての子どもの質の高い教育の保障が、国際的な重点政策課題に含まれました。また子どもの権利条約の批准状況を確認している国連子どもの権利委員会においても、昨今、特に就学前の乳幼児の権利保障の必要性が指摘されています。すべての乳幼児に質の高い教育を保障するためには、その質にかかわる学際的な根拠がより広く社会に伝播される必要があると考えます。
世界規模の乳幼児教育の最も大きな専門組織としては、順に、世界幼児教育・保育機構(OMEP)と、ヨーロッパ乳幼児教育学会(EECERA)、環太平洋乳幼児教育学会(PECERA)があります。そのうちの環太平洋乳幼児教育学会は、2000年に設立し、第一回大会は神戸大学を大会校として開催されました。以降、ニュージーランド、中国、韓国、オーストラリア、台湾、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア等で、年次国際大会が開催されています。日本では、2011年と2024年に国際大会が開催されました。2024年には500人近い参加者が世界各地より参集し、国内外における乳幼児教育の研究と実践の最新の動向を参加者たちが共有しました。
環太平洋乳幼児教育学会日本支部は、任意団体として2010年3月に神戸大学において設立されました。2011年に日本における二回目の世界大会開催の準備を契機に設立された組織ではありましたが、東日本大震災により海外からの参加者のキャンセルが相次いだ中でも、多くの日本の実践者が国際学会の大会に参加してくださいました。大会の後に、国際学会に参加した日本の乳幼児教育界の実践者や研究者から、共に集い、世界の保育についての知見を深め、日本の保育の独自性や素晴らしさを再認識し、実践者と研究者が協働し、参画型の乳幼児教育のアクション・リサーチの拠点を創っていこうとの声があがりました。そこで2012年2月に日本支部の第一回研究会を神戸大学で開催することになりました。以降コロナ禍では一時中断や遠隔開催もありましたが、毎年、環太平洋乳幼児教育学会の日本支部の年次研究会を、神戸大学を中心に日本各地で開催してきました。
これまでは定款はあるものの、研究会の運営は、入会金や年会費制度は設けず、代表幹事等が所属する大学や開催大学等で予算を管理し、運営をボランティアで実施してきました。2024年8月に東洋大学にて開催された国際大会には500人近い参加者があり、また、日本支部代表幹事の北野が国際学会の会長に選出されました。世界の乳幼児教育学会との連携をさらに深め、またその知見をより日本の乳幼児教育実践現場に伝播し、さらには専門職にとどまらずより広く市民に乳幼児教育の独自性や重要性を、学問的根拠をもとに伝えることが、日本の乳幼児のウェルビーイングに資する活動を行うことにつながると考えました。そのためには、社会的に認められた公的組織とし、持続可能な運営の体制を整え、多くの市民の方々と連携協働を図ることが不可欠であるとの認識から、特定非営利活動法人格を取得して同法人として活動するのが最適であると考えました。
2024年11月4日
特定非営利活動法人 環太平洋乳幼児教育学会日本支部(PECERA JAPAN)
設立設立発起人一同
代表 宇田(北野)幸子